4月18日 京都の知恩院では、法然上人が亡くなられた日を期して「御忌大会(ぎょきだいえ)」が行われます。
その行事の中の一つ、国宝三門楼上内で夜の8時から朝の7時まで夜通し行われるのがこの「ミッドナイト念仏」という行事です。
1997年から行われているそうです。
みうらじゅんが名づけたかのようなナイスなネーミング。
朝にこの行事のことを知った時は、ただお坊さんがお経を唱え続けるだけだと思っていたのですが、ちょっと調べると一般人の参加も可能とのこと。しかもこの三門の入場は年に数回の特別公開の日にしか入れない(たしか入場料800円くらいだったはず)のに今回は入場無料。
ネットで検索するとこんなフレーズが躍る。
ポクポクが止まらない
今夜はオールで、念仏三昧
ミッドナイト念仏、恐ろしい子
ミッドナイト念仏のためにこの1年間過ごしてきたと言っても過言ではない
これは行くしかないだろうということで、夜、全部のチェックインが終わり、その時に共有ルームにいた今回4回目の宿泊の日本人ゲストOさんと、本日三泊目のフランス人シンガーとギタリストのカップルを誘い、「ゲストハウスひつじ庵」を出て、タクシーに乗り行ってきました。
到着したのが23:00頃、結構な列ができていた。意外に若い人が多い。ちょうど様子を見に来ていたお坊さんが「かなり短くなったなぁ」と言っていた。ゲストさんと最後尾で待つ。
三門の前では「ミッドナイト念仏イン御忌」と大きな看板が。
まだ夜となれば肌寒い静まり返った京都の夜。そんななかここだけ三門の上の方より、ポクポクポクポクと木魚を叩く音が絶え間なくリズミカルに聞こえてくる。
待ってる最中、ゲストさんと会話。フランス人カップルはイマイチ神社とお寺の区別がついておらず、幾つか質問されるので簡単に説明。
日本人のあいまいな宗教観みたいなものをつたない英語で伝えた。神社のお祈りする向こう側には鏡がある、鏡はすべてを照らすもの、なのですべての人がお祈りしても良いんだよとか、お寺もインドなどから来たたくさんの神様を日本風に変化・取り込んでいるのでなんでもアクセプトなんだよみたいな話なども。
意外にもフランス人はキリスト教徒でさえもごく一部の人しか教会に行かないんだそうな。家でお祈りするだけ。自分たちも宗教的なキャンドルイベントに参加したりもするけどみんな元々の意味なんて気にしてないよ、なんて話を聞いた。
途中、「Midnight Nembutsu At Chion-in」と英語で書かれたチラシが配られた。看板にも可愛いイラストも描かれていてなかなか凝ってる。だれか学生かどこかの民間会社とかがプロモーションに関わっているのだろうか。
ポクポクポクポクポクポクポクポク。
(↑ポックマ って何これミッドナイト念仏のゆるキャラ?)
一時間ほど待って、入口に到着。靴を脱ぎ配られた袋にいれ、机の上に置かれた用紙に名前と電話番号とどこでこのイベントを知ったかなどを記入。急な階段を上る。
階段を上るにつれ、木魚の音が大きくなっていく。
部屋の入り口に入ると、ものすごい異様ともいえる光景が。
真ん中に国の重要文化財の宝冠釈迦牟尼(しゃかむに)仏像、その両脇にずらりと十六羅漢像、天井には龍や天女などの極彩色の天井画、そして5列で150個がずらりと並んだ木魚を一心に叩く人々。薄暗い灯りに照らされている。
ポクポクポクポクポクポクポクポク。
(↑2014年の朝日新聞の動画)
20分程度叩いただろうか、隣のOさんに声をかけ、席を離れる。真ん中の方で一緒に来たフランス人カップルがまだ叩いているのを確認。ぐるっと一心にたたき続ける人々の後ろを通り、部屋の反対側へ。そこにも10人ほど列で来ていて、その先頭では大きな木魚を順番に一人ずつ叩いている。これが奏でる大きな低音が150人のリズムを先導している。人が入れ替わるときには隣のお坊さんが横からポクポクと叩き「間」が空かないようにする。リズム感のない僕の番の時は他の人より早くヘルプに入られた気がした(^_^;)
下に降りる。出口のところに置いてあったポストカードが可愛い。
一緒に来たOさんは「これは一生の思い出になるかも」と。フランス人カップルとは10分ほどで合流。「すごくいい体験だった。誘ってくれてありがとう」と。
日本人でさえも知らなかったこのイベント、一年にこの日 一日だけ。自分自身も初めての体験だったが喜んでくれてゲストハウスオーナー冥利に尽きる。
合流して帰るころは12:50だったが、列が自分たちが来た時より少し短くなった程度でまだ続いていた。三門の前でみんなで記念撮影。タクシーで帰る。
宿に帰ると他のゲストさんはちょうど寝るところだった。共有ルームで一緒に行った三人で小声で30分ほど先ほどの体験を語らう。
翌朝起きてみてツイッターを観てみると、ある人の投稿が。
おはようございます。
知恩院ミッドナイト念仏完遂しました。
8時間木魚を仏っ叩きました。眠気との戦いでした。
徹夜ポクポクお疲れ様でした。
また来年も行きたい。
「ゲストハウスひつじ庵」オーナーのり