■はじめに
ずっとやりたいと思っていた企画「京都のゲストハウスの黎明期」を知るお二人へのインタビューが実現しました。
全国で12店舗を運営しているジェイホッパーズグループの飯田さんと 京都の小規模町家ゲストハウスの先駆け和楽庵オーナー ルバさんのお二人。
以前お会いした時に、お二人から京都のゲストハウス黎明期のお話をいろいろ伺って、これは何か形に残さなければと思い、企画させていただきました。
以前私がブログにまとめた「京都 簡易宿所リスト一覧と京都ゲストハウスの簡単な変遷」の中で京都のゲストハウス第一号をあいまいながら決めましたが、それは果たして「正解」だったのか?記録には残っていない…お二人の宿をオープンしたその前後の時代の空気感みたいなものを少しでも紹介出来たらなと思います。
*
まずは、簡単なプロフィールを。
〇飯田章仁さん(以下敬称略):
有限会社ジェイホッパーズ代表取締役。1999年にバックパッカーとしてオーストラリア・東南アジア。バイクツーリングで東北・北海道の旅。その後2000年よりアジアからヨーロッパまで443日のバイク旅。
2002年12月に京都に「ジェイホッパーズ京都」を開業。その後広島・大阪・飛騨高山・福岡・熊野湯峰・琵琶湖と合計12店舗の宿を経営。シェアハウスビジネス・飲食店・ツアー事業も運営。京都簡易宿所連盟の代表。現在 フットサルコート併設の琵琶湖店にて蹴り友募集中!
〇ルバキュエール裕紀さん(以下敬称略):
コンサルティング会社を辞め1年の旅の後、築100年の町家を改装した「ゲストハウス和楽庵」を2006年7月に開業。2010年二号店の「楽座」をオープン。こちらで働いたスタッフが各地でゲストハウスを独立開業していくなどゲストハウス界に与えた影響力は大きい。京都簡易宿所連盟副代表。
〇のり(私のこと。今回インタビュアーです):
建築系の会社を辞め、オーストラリア・東南アジア・南米・ヨーロッパ・中東など38か国をバックパッカーとして旅したのち、再就職するも、ゲストハウス開業の為に京都に移住。築80年の町家を改装した「ゲストハウスひつじ庵」を2013年11月に開業。
【目次】
■お二人はどんな人?
のり:
本日はお時間作っていただいてありがとうございます。お二人とも京都簡易宿所連盟の代表として、京都市宿泊税の減税を議員へ働きかけるなど、ご尽力していただきありがとうございます。
さて、本日は京都のゲストハウスの「あけぼの」といいますか「黎明期」あたりのお話を聞かせてもらいたくてお集まりいただきました。
まずは、飯田さん、現在は京都の三店舗を含めた全国に12店舗のお宿を運営されてますが、第一号店の「ジェイホッパーズ京都」を2002年に始められる前は何をされていたんですか?
飯田:
石油会社のサラリーマンです。11年半。80年代90年代のガソリン売るぞ~って時代ですね。
のり:
海外勤務とかされてたんですか?
飯田:
いや、ガソリンスタンドでぬいぐるみ被ってチェッカーフラッグ振ってましたわ。
ルバ・のり(笑)
のり:
それがいつ頃から宿をやろうと思われたんですか?
飯田:
会社辞めたのが1998年…、その前後で会社に行きながらバックパッカーやってて、
バイクで旅したのが2000や2001年。海外で沢山安宿を泊まって「なんで京都でこんなの無いんやろ」って、問題意識もったのがはじまりですね。
のり:
どのあたりを旅されたんですか?
飯田:
アジアからヨーロッパまでユーラシア大陸横断一年半バイクの旅。その前は、バイクでは行ってないんですけど会社辞めてすぐ位に東南アジアとオーストラリアも。あわせて二か月くらい行ったんかな。そこで初めてバックパッカーズ的なところに泊まりました。
のり:
理想的な宿とか印象に残った宿とかありましたか?
飯田:
リトアニアの「Old Town Hostel」(※首都のVilunusに今でもあります)。
そこのオーナーが毛モジャモジャのでっかい軍隊上がりの面白い兄ちゃんで、そこのスタイルが好きで、お客さんと話したり、一緒に遊びにいったり。ごはんもスタッフと一緒に食べたりとか、イメージ的にはそこが下敷きになってるかな。
そのあとキャンプもしたり、ゲストハウスとかB&Bとか色々泊まりましたけど、
旅の後半は「宿をやる」って頭にあって、その宿を観察とかしてたかな。
最初は、日本でツアーをしようと思ってて、自分で車を運転しながらお客さんを田舎に連れて行ったりって考えてましたが、道路交通法とか旅客運送とか…白タクになるやん、で、すぐにはできへん、そうだったらバックパッカーかなぁって。
今は琵琶湖湖畔に「ジェイホッパーズ琵琶湖ゲストハウス」を営業始めましたので、琵琶湖バイクツアーができる環境になりました。なんとかそこまでやってみたいなぁ。
のり:
なるほど。続いて…ルバさんは?
ルバ:
2004年に4年働いた会社を辞めて、そこから一年ぶらぶらしました。
のり:
前職はどんな会社だったんですか?
ルバ:
外資のコンサルティング会社です。ボストンコンサルティング。
飯田:
スゲー!
のり:
やはり仕事で英語を使ってたんですか?
ルバ:
そうですね、時々は。
飯田:
だからあのプレゼン力が(笑)!
ルバ:
ないですよ~(笑) でも資料作成はちょっと自信が!無茶苦茶書かされましたもん。
のり:
そのぶらぶらしていたというのは旅をしていたんですか?
ルバ:
そうですね。私は会社辞める前から宿やりたいなぁって思ってて。なんどか帰国したりしながら、ヨーロッパが8か月くらい、あとはアジア。合計1年くらいですね。大学が京都でしたから京都で物件探ししながら、他のお宿さんとか泊まったり。
そうそう!飯田さん当時ジェイホッパーズ開業してて、結構有名だったから、バイクの「寄って候」を読んで、あー面白いこの人~って「ぜひお会いしたいで~す」って書いて送ったら…ノーレスっていう。
のり:(笑)
飯田:
ごめーん(笑)えー、直接メール?
ルバ:
いえ、HPに載ってた予約フォームから。いや~、こういうの沢山 来てるんやろうなって思って「なんやこいつ」って思われたんかな~って(笑)
飯田:
いやぁ無視したおぼえないやんけどなぁ(^^;
のり:
なんですかその「よってそうろう」って
飯田:
wifiとかブログって言葉もない頃、ホームページビルダーで作ったサイトにリアルタイム旅日記をアップしてたんです、一部 後から書いたものもありますけど。ノートパソコン持って旅して、その頃 ブロードバンドじゃないから、電話線繋いで…ストレートとかクロスとか変えないかんからそのスイッチャーみたいなやつつけたりとか、宿のおばちゃんにちょっと電話線かしてとか言って、現地のアクセスポイントに電話して…ティートゥルトゥル~って。
ルバ:
それを読んでました。ジェイホッパーズさんの公式ページからリンクが飛んでて。
飯田:
あれは…あの頃はその旅日記を見て来てくれる人が結構いて、最初としては、それなりに役にたったかな。
ルバ:
面白かったですもん。
飯田:
バイクの人も結構来てくれたし。(※興味がある方はこちら→「寄って候」)
のり:
ルバさん、オープンする前に泊まったところとかで良かったところ参考にしたところとかありますか?
ルバ:
タイのアユタヤで泊まったゲストハウスです。一階がレストラン&バーで、そこで交流したり、オーナーが観光に連れて行ってくれたり楽しかったですね。
のり:
あぁ、原体験がお二人とも同じですねぇ。日本で開業前に泊まりに行った宿とかありますか?
ルバ:
「とんぼ」さん、「小世界旅社」さん、「胡乱座」さんですね。皆さん、とってもお世話になりました。
のり:
なるほど。では、そのあたりの名前がでたところで、ゲストハウスの黎明期のお話を伺っていきましょうか。
■京都ゲストハウス黎明期の話
飯田:
「スリーシスターズ」とかありましたね。
ルバ:
ありましたね。
のり:???
飯田:
あと「グリーンピース」僕のおじさんが知り合いでオープンの前におじさん通じて話聞かせてっていったら「なんで商売ガタキに~」って。
ルバ:
えー(笑)。私が行ったときは「胡乱座」さん「小世界旅社」さん「トンボ」さんとか開業されてて、お話 聞きに行ったら、皆さん凄いしっかり対応してくれて。
飯田:
そのあたり、元バックパッカーズな人達がやってる宿やね。
ルバ:
もともと「スリーシスターズ」さん「谷ハウス」さん「UNO HOUSE」さんとか昔からやってはるけど、ちょっと系統違いますもんね。
飯田:
「〇〇(名前伏せてます)」のおばちゃんとか元気かなぁ。お客さんに手伝わせてたもん。
のり:え?
ルバ:
私も一回泊まりに行ったら泊まる部屋が無くて…「ごめんねぇ」ってピアノ部屋で泊まらされて、でもちゃっかり正規の値段を…。
飯田:
今だと多分許されへんくらいの…おおらかな時代ですねぇ。
「〇〇」のおばちゃん「私 英語分からへんから外国のお客さんきたら代わりに言うといて」って俺に頼んできたり(笑)
のり:
その頃のバックパッカー系の外国人とか泊るところどうしてたんですかね。
飯田:
でも当時は他にもユースホステルがあったから。
のり:
あ、そうかユースホステル、当時は東山、宇多野、あと…北山にありましたね(※宇多野YHは現在でもあります)。
ルバ:
私が宿で会った人 結構ゲストハウス初めてですって人が多かったですね。元々はホテルとか泊まってた人もいたんかなぁ。
飯田:
京都御苑の西の「パレスサイドホテル」とか、外国人多かったですね。
あ、あと「ホワイトホテル」…京都駅前の。
ルバ:
あー、はいはい。
飯田:
けっこう鄙びた感じでしたねー。その系列で「ホワイトハウス」ってのもあってだいぶボロ感でてました。それでもゲストハウスっていえばゲストハウスよ。名乗ってはいないですね。
どっちかっていうと労働者用ですかね。崇神地区にも安宿があって、俺、友達がそのあたりで安宿探してたので一緒に行って「中みせて」って言うたら「そんなやつは帰れ~!」って。
ルバ・のり(笑)
のり:
またまたその展開(笑)ルバさんが既存の宿に聞きに行った話と対照的なんですけど(^^;
それはその風貌だからですか?
飯田:
知らんけど(笑)
あと、「ジャパニーズイングループ」はインバウンド対応ができる安めの旅館で今もあるんじゃないかな。ジャパニーズインってステッカーみたいなやつ貼ってて、五条楽園にあった宿もそこの人が会長やってました。
のり:
知らない名前がいっぱい出てきますね。では続いて「京都のゲストハウス第一号はどこか」問題について聞いていきましょうか。
■京都のゲストハウス第一号はどこか?
のり:
以前2016年4月に私がブログにまとめた「京都 簡易宿所リスト一覧と京都ゲストハウスの簡単な変遷」の中で京都のゲストハウス第一号を「UNO HOUSE」と仮で決めさせてもらいましたが、当時を知るお二人にそのあたりの実情みたいなものをお聞きしたくて。
あと先ほどから出ている宿とここ数年のゲストハウス・ホステルとどう違うのか…あればその線引きみたいなものとかも。
以前、簡易宿泊所連盟の忘年会でお会いした時に1970年の大阪万博あたりで京都市から依頼されて始めた安宿も多かったと聞きましたが。
飯田:
大阪万博の時に、急増するであろう国内外の観光客の受け皿として、地元の広い家持ってる有志に行政が宿をやってほしいと依頼した、それで営業はじめたところが何軒かあります。
あの頃の安宿は「インバウンド対応できる民宿」という感じ。今でいうゲストハウスとは違う。ゲストハウスっていったらドミトリ(相部屋)があるかないかが一つ大きな定義となるかな。
だからその後オープンする「Budget Inn」さんとか「Tour Club」さんとか、そのあたりからが完全に分かれていて2000年とかそのあたりにその二つができたのが京都のバックパッカーズの最初かなと。(※注:ちなみにその二つは経営者は同じです)
ルバ:
私のなかでは「東寺庵」さんが最初だと思ってましたが。
飯田:
それを言ったら「UNO HOUSE」さんもドミトリあるやん。いわゆるヨーロッパスタイルというのは…「Budget Inn」さんとか「Tour Club」さんじゃないかな。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
※ここで注釈。京都市の簡易宿所の営業許可のリストによると、
私がピックアップした宿の開業年は以下の通りです。
ウノハウスUNO HOUSE(1999年 H11.2.3)中京区
ジェイホッパーズ(2002年 H14.11.18)南区
Budget Inn(2003年 H15.8.18)東山区
ケイズハウス京都(2003年 H15.10.28)下京区
Tour Club(2004年 H16.3.10)下京区
五条ゲストハウス(2003年 H15.8.26)東山区
胡乱座ゲストハウス(2005年 H17.6.30)下京区
月光荘(2005年 H17.9.9)北区
タロカフェ(2005年 H17.9.9)北区
ゲストハウス和楽庵(2006年 H18.7.6)左京区
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
のり:
あれ?その「Budget Inn」さんとか「Tour Club」さんは登録ではジェイホッパーズさんの後ですよ。
飯田:
もうすでにあったんよ。むっちゃ流行ってましたよ。
ルバ:
始めは無許可だったんですかね。
飯田:
いやそれは無いと思う。きちんと運営してはったので。簡宿ではなくて旅館営業での許可やったんちゃいますか。
ゲストハウスの線引きとしては、ドミトリーがある。共用の部屋があって、自炊もできてて低価格の宿。あとは…もう形態じゃなくてオーナーの心構えの違いとか。
のり:心構え(笑)
ルバ:
大阪万博あたりに開業した宿は、市に要請されて始められてるということで事業としてのスタート地点が違うんかなと。
飯田:
実際に、いくつかは許可とってなかったから、ジェイホッパーズは2002年に許可とって始めましたが、その辺から保健所とかが既存の宿にも許可とるように勧めたんじゃないでしょうか。でもまぁ、昔からやってるところは市から頼まれて始めたのに、なにをいまさらって感じかもしれんけど。
昔は、無茶苦茶だったもん、例えば「〇〇(名前は伏せます(^^;)」さん、庭にコンテナハウス5つくらい置いてそこに月極めで住まわせたり、空いてるときはそこにお客を泊めさせたり。あとは、物干し台に布団敷いて「ここで寝てぇ」とか(笑)
のり:物干し台(^^;?
飯田:
ほぼ屋根の上ですね。そこで布団の上に横になって、空見ながら…
ルバ・のり:(笑)
ルバ:
「〇〇」さんなんて、スタッフは120パーセントで予約取れって言われていたみたいで、行ってみて満室だったら押し入れで寝るという。
のり:
凄い時代ですね。
ルバ:
そのあたりの安宿の話って、黎明期というか神話の時代…。
飯田:
「Tour Club」さんは初めはドミトリーがあるB&B的なスタートだった記憶があります。僕がやろうと思ってたゲストが交流したり自炊したりでき広い共有スペースがあって、というのとは少しニュアンスが違うけど。でもスタイルは違うけどバックパッカーズだと思います。
のり:
じゃあ、微妙なところですが第一号は「Tour Club」さん(オープンは「Budget Inn」より先)。簡易宿所の許可は後になるが存在はしていた1999年が京都のゲストハウスの誕生の年でいいでしょうかね。
で、残念ながら「Budget Inn」さんとか「Tour Club」さんは現在廃業なさってますね。現存する京都古参のゲストハウスは「ジェイホッパーズ京都」さんということになりますね。
■ゲストハウスの呼称、料金、出店地あれこれ
のり:
あと、呼び名に関してなんですが、安宿にはゲストハウス・ホステル・バックパッカーズとかありますが。
飯田:
うちはバックパッカーズホステルですね。
ルバ:
うちはゲストハウス。だって「house」やもん(笑)。私は結構タイを廻っていたからそうなったのもあるかも。
のり:
どのみち外国から入ってきた言葉ですからね。(※詳しくはジェイホッパーズさんのページに解説があります「ゲストハウスとは」「ホステルとは」)
飯田さん、先ほど 少しオープン前の融資を受ける際の市場調査の資料を見させてもらいましたが、素晴らしいですね。
「バックパッカーは旅する生活者」とか「日本のバックパッカービジネスは未開拓の荒野」とかゾクっとするパンチラインもあって、いやはや…。2001年半ばの時点でこれからインバウンドが伸びていくこと、ビジネス的な伸びしろを予見していますね。
飯田:
とりあえずお金を貸してもらえんことにはお話にならなかったので必死でしたね。
のり:
興味深いのは他店舗の料金ですね。ジェイホッパーズさんは、オープン当初 いくらで始められたんですか?
飯田:
ドミ2500円、個室3000円ですね。(※ちなみに当時は消費税5%で この価格は税込み)
のり:
当時のユースホステルよりは安い設定ですね。
飯田:
そうですね。周りの料金とオーストラリア・イングランドあたりの相場を考えて決めました。
のり:
その値段がその後しばらくの京都のゲストハウスのスタンダードになりましたね。
飯田:
見られている感はあったので、できるだけ相場を維持できるように料金変更せずに引っ張ったというのはありますね。
ルバ:
うちもドミトリー2500円でしたね。当時 既にオープンしていた宿の相場をみて決めました。
飯田:
でも12月にオープンして次の3月で満室になったし、販促とかとくにやらなかったな。OTA(※予約サイトのこと)もホステルワールドしかなかったし。
のり:
当時からも桜をみにくる外国人とかいましたか?
飯田:
もちろん。
ルバ:
けど、稼働率をみると常に埋まっていたので、今みたいに分かりやすい繁忙期閑散期ってなかったですよね。
のり:
いい時代でしたね…。
飯田:
そう外国人相手だとそういう波もないから日本人だけの宿よりはビジネス的にはよかったですね。
ルバ:
当時は本当にこの業界は白地でしたよね、まっさら。
飯田:
当時、安くて綺麗で設備の整ったゲストハウスはまだほとんどなかったから、各地で一軒目で始めるときは、だいたいそんな状況だったなぁ。オープンしてみたら「わー、入るわ!入るわ!」って。
ルバ:
そうか、それを何回も経験しているんですよねぇ。
のり:
京都から次に店を出したのが広島ですね。流石ですよね目の付け所が。
飯田:
受付やってたらだいたい傾向が分かりますね、外国人がどこから来てどこに行くのかとか、人気の都市とか。
ルバ:
当時 話題になってましたよ。カオサンさんとどっちが先に店を出すかとか。
飯田:
ははは。まぁ、それは別にウチを意識してるんじゃなくて「視点」が同じだからどの町に店を出したいかだいたい被るんでしょうね。
カオサンさんとケイズさんは結構そうなりますね。でもさすがに滋賀とか和歌山とか来ませんですねぇ。ケイズはリゾートが好きだから白馬とか富士山とか。
のり:
富士山近辺では出さないんですか?欧米系を中心に人気ありそうですが。
飯田:
東の方は、まず東京出してからって考えてたけど、2011年の震災があったので…
のり:
あー。私も震災の頃、ゲストハウスでアルバイトしていて原発事故のあとは桜で埋まっていた宿帳が全て真っ白に…。その後しばらくなかなか客足もどらなかったですからね。
その後近隣アジア諸国が豊かになってきていたり、東京オリンピック開催決定や円安効果などもあって外国人観光客が増え、宿泊施設が一挙に増えることになりましたね。
現在、ゲスト側としては桜や紅葉などの繁忙期でも比較的 宿が取りやすくなったようですが、宿側としては、閑散期の稼働率の低下や値下げ競争が問題化している面もでてきていますね。
■ゲストハウスの近況と未来は?
のり:飯田さん、いくつかの都市で宿を運営してますが、稼働率の変化の地域差とか時差とかありますか?
飯田:
大阪京都が落ちるのは早かったなぁ。うちは2017年秋から落ちたかな。
その前も もちろん実感として有りましたが、稼働率として表れていなかったです。問い合わせは少なくなったけど最終的に埋まるという。数字として、現れてきたのが2017年の紅葉が終わったころ。
ルバ:
うちはそれより一年早い2016年紅葉が終わったあとからですね。
のり:
ひつじ庵もその頃からです。小規模ゲストハウスはそうなのかも。2016年ころから大箱のホステルが増えだしたころですし、当時違法民泊が一挙に増えだした煽りをまともにくらったのかもしれませんね。その後、2017年ころから今度はホテル建設ラッシュとなりますし今でも続いています。
飯田:
今年の冬(2019年1月)はひどかったなぁ。
ルバ:
うちはairbnbが絶好調でairbnbが1月はカバーしてくれて。
飯田:
エアビーは合うところと合わないところあるからなぁ。うちみたいなところは合わないんじゃないかな。
のり:
休兵衛(※町家系の旅館)はairbnbやらないんですか?
飯田:
「休兵衛」はまだbookingcomで充分入ってますし。うちはサイトコントローラー(※いろいろなOTAの在庫を一元管理できるサイト)使ってるから、OTAの隆盛とかパワーバランスがわかりますね。
ルバ:
最近はairbnbの勢いは凄いと思いますよぉ。古民家系小規模ゲストハウスとairbnbのお客さんの質的には凄い親和性がありますね。昔のお気楽な時代を考えると今はOTAも考えないといけないし、クチコミとか写真とか…
飯田:
それが普通、今までが楽すぎたんですよ。
ルバ:
「長くやってる人っていいわよねぇ」ってたまに言われるけど、もちろんリピーターさんがいてくれて助かってるけど、一方で新しく始めたところも最初からバンバン予約入るような体制を作って、話題性とか…うまく波に乗れたらトントンって。
のり:
ここ数年の宿は、先行者の宿でうまくやっているところを見て、デザインとか打ち出しかたとかモデルケースを学んで始めやすいですからねぇ。それこそ最初は大変だったんじゃないですか?
飯田:
ウチらはウチらで、海外の宿を参考にしてましたし、同じですね。許認可的な苦労はあったけどなぁ。昔は設備とかあまりお金かけなくてもベッド埋まったし、今は横見てやらなきゃいけないからなぁ。
のり:
昔、和楽庵さんは「ゲストハウスプロジェクト」って開業の手引きみたいなページを公開していましたね。あれ無茶苦茶参考にさせてもらいましたよ。
ルバ:
そうですねぇ、あれも一部の人から「なんであんな同業者を増やすようなことするねん」って言われたりしてましたね。今は役割を終えたと思ってるのでページは閉鎖してます。
飯田:
でも、今はそれが財産になっててルバさんを慕って来る同業者の横のつながりとか、いまの京都簡易宿所連盟の話とかはそこがベースの話になってて。
ルバ:
そうですね。まさか、でもここまで宿が増えるとは。
のり:
お二人、これからさらに店舗を増やしていこうとかあります?
ルバ:(速攻で首を振る)
飯田:
店舗によっては賃貸の再契約のタイミングでどうするか考えないといけないこともあると思います。でももし次やるとするなら温泉地ですかね。今ある「ジェイホッパーズ熊野湯峰ゲストハウス」はエエぞぉ、理想的なお客さん来るし、掃除終わったら温泉入れるし。
ルバ・のり:うわ~羨ましいぃ。
飯田:
あと去年オープンした1900坪の琵琶湖店もおすすめですよ!近江舞子ビーチに徒歩3分でバーベキューコーナーもあるので、これからの季節は最高ですよ!
のり:
そこも楽しそうですねー。先日 琵琶湖の竹生島行って楽しかったですし、琵琶湖ってポテンシャルあるのになかなか知られてないですもんね。この夏、友人と泊まりに行かせてもらいます。
ルバさん、先日の「楽座」の賃貸の契約更新できなかった件、SNSの反応見るとかなりの反響でしたね。ここ数年の町家を壊され新しくホテルとかが建設されていく現状の「裏」を垣間見た感じでした。
ルバ:
そうですね。これだけ地価が上がれば、そりゃそうですよね…残念ですが。あと「和楽庵」に関して言えば数字的には一番「冬の時代」は過ぎたかなって感じなのでウチは拡大志向は無くてむしろ一店舗が理想です。なるべく今後のことも考えて一店舗でお客さんとの関係を大切にして密に関係を築いていきたいなって。
のり:
「京都簡易宿所連盟」の活動としてはなにかありますか?
ルバ:
京都市の宿泊税は、1泊2万円弱のホテルのゲストも、1泊2000円のホステルのゲストも、全て200円支払うという、すごい不公平な制度です。京都簡易宿所連盟として見直しを求める活動を進めています。また、京都の方に、ちゃんとやってる、頑張ってる簡易宿所も多いんだよ、ということを知ってもらうためにも、社会貢献活動などもしていきたいですね。
のり:
なるほど。(和楽庵さんの掃除の時間を使わせていただいたので)もうそろそろ時間ですね。いやぁ、もっともっとお聞きしたいことありましたが。
飯田:
また飲みの時にでも。
のり:
楽しみにしてます。では、ありがとうございました!!
(インタビュー・編集・文:ゲストハウスひつじ庵 のり)
(2019.06)
■要チェック
飯田さんの運営しているお宿
ルバさんの飯田さんの運営しているお宿
のりの運営しているお宿
京都にある簡易宿所のオーナーが加盟している団体
〇「京都 簡易宿所リスト一覧と京都ゲストハウスの簡単な変遷」
ひつじ庵のオーナー私(のり)が2016年に書いた記事